「インフレ」や「デフレ」は、経済ニュースでよく耳にするワードです。
でも、何となくはわかっていても、意味や違いを説明できる人は、意外と少ないのではないでしょうか。
「インフレとデフレって、なに?」「違いは?」「結局どっちがいいの?」 などなど…
この記事では、インフレやデフレについて疑問を感じている方の向けて、インフレとデフレの基本的な概念や違い、関連する経済現象などについてわかりやすく説明します。
経済ニュースをより深く理解するために、ぜひ参考にしてみてくださいね。
インフレとは

インフレ(インフレーション)とは、物価が継続的に上昇する状態を指します。
たとえば、普段100円だったりんごが、数か月後や数年後には110円、120円と値上がりしていく状態です。


つまり、お金の価値がどんどん下がっていく状態のことです。
インフレが起こる主な要因
需要の増加
景気拡大により消費者の購買意欲が高まると、商品やサービスの需要が増え、供給を上回ることで物価が上がり、インフレになります。
この需要の増加によるインフレは、経済成長につながると期待されるので、一般的には経済にとっては好ましいと考えられています。
いわゆる「良いインフレ」の状態です。

この需要要因によるインフレを「ディマンドプル・インフレ」と言います。
供給コストの上昇
原材料や労働力などの供給コストが増えると、その分、価格が引き上げられてインフレ状態になります。
このインフレは、需要が増えているわけではなく、原材料価格の高騰により生産コストが上昇し、それがモノの価格に転嫁されて物価が上昇します。
ですので、「悪いインフレ」の状態と言えます。

供給要因によるインフレを「コストプッシュ・インフレ」と言います。
通貨供給量の増加
中央銀行の金融緩和政策で、市場に流通するお金を増やすことで、相対的にお金の価値が下がり、物価が上がることがあります。
量的金融緩和がその一例です。
インフレの影響
良い影響としては、物価が上昇することで経済が活性化して、企業の売上や利益が増えることにより、投資や雇用の拡大が期待できます。
悪い影響は、商品やサービス、食料品や生活必需品などの価格も上がり、消費者の負担が増加します。
また、 銀行に預けたお金の価値が下がり資産が目減りするので、購買力の減少に影響する可能性があります。
デフレとは

デフレ(デフレーション)は物価が継続的に下落する状態を指します。
たとえば、100円のりんごが、数か月後や数年後に90円、80円と値下がりしていく状態です。


物価が下がるということは、お金の価値が上がるということです。
デフレが起こる主な要因
需要の減少
景気が弱いと消費者が将来の不安から支出を控え、商品やサービスの需要が低迷します。
需要が減少してモノが売れなくなると、デフレと景気悪化の悪循環の状態に陥り、経済全体を縮小させ、デフレをさらに深刻化させる可能性があります。
供給の過剰
グローバルな生産コストの低下による影響や、技術革新、流通革新による生産性向上により、生産量が需要を大きく上回ると、在庫過多になり価格競争が激化して、モノの価格が下がってデフレ状態になります。
賃金の低下
労働者の賃金が減少すると購買力が低下し、物価が下がる悪循環に陥ります。

デフレは、どれか一つの要因ではなく、複数の要因が相互に影響し合って起こります。
デフレの影響
良い影響としては、商品やサービスが安く手に入るため、消費者の負担は軽くなります。
しかし悪い影響として、価格が下がることで企業の利益が減少し、倒産やリストラが増えるリスクがあります。
またデフレが長期化すると、企業も消費者もお金を使わなくなり、経済が停滞してしまい、深刻なデフレ状態になります。
インフレとデフレ、どっちがいい?

インフレとデフレには、それぞれメリットとデメリットがありますが、一般的には適度なインフレが望ましいとされています。
これは、緩やかな物価上昇が経済成長を促し、経済を活性化させるからです。
たとえば、インフレ率が2%程度であれば、企業の利益が増加し、雇用や賃金の上昇につながります。
一方、デフレは一見すると消費者にとって良いように思えますが、長期的には経済の停滞や失業率の上昇を招き、生活の質を下げるリスクがあります。
インフレとデフレの覚え方

インフレ
インフレは、物価がインクリース(increase:増加)すること。
物価が膨らんで上昇していく 「膨らむ風船」のイメージです。


風船が大きくなりすぎると破裂するように、インフレが行き過ぎると経済に悪影響を与えます。
デフレ
デフレは物価がデクリース(decrease:減少)すること。
物価がしぼんで下がっていく「しぼむ風船」のイメージです。


風船がしぼみきってしまうと、経済が停滞してしまいます。
インフレとデフレの違い

インフレとデフレの違いをまとめると、次のようになります。
項目 | インフレ | デフレ |
---|---|---|
物価の動き | 上昇 ↑ | 下落 ↓ |
お金の価値 | 下がる↓ | 上がる ↑ |
経済活動 | 活発化(穏やかな場合) ↑ | 停滞 ↓ |
購買力 | 減少 ↓ | 増加 ↑ |
企業の利益 | 増加しやすい ↑ | 減少しやすい ↓ |
失業率 | 低下する傾向 ↓ | 上昇する傾向 ↑ |
関連する経済現象

スタグフレーションとは
スタグフレーションは、「stagnation」と「inflation」を組み合わせた造語で、経済成長が停滞している中で物価が上昇する現象です。
通常、不況の時は物価が下落します。
しかし、スタグフレーションでは物価が上昇して矛盾した状況になります。
物価が上昇して、家計の負担が増加しているにもかかわらず、企業の利益は減少し、従業員の賃金も上がらないので、非常に厳しい経済状況になります。
ハイパーインフレとは
ハイパーインフレとは、極端な物価上昇が短期間に起こり、通貨価値が急落する現象です。
たとえば、1ヶ月で数十パーセント以上の物価が上がるような状態をいいます。
お金の価値が急速に下がり、 通貨の信頼性が失われて貯蓄が無意味になるので、日常生活が極めて困難になります。
ハイパーインフレは、通常のインフレとは異なり、経済に深刻な打撃を与える危険な現象です。
まとめ
日本は、長年にわたりデフレ状態が続いてきました。
しかし、新型コロナウイルスの影響や国際的な供給チェーンの混乱、エネルギー価格の高騰などにより、現在は物価が上昇し、インフレ状態にあります。
インフレとデフレは、私たちの生活に大きな影響を与える現象で、経済状態を理解するための重要なキーワードです。
日々の生活と密接に関係しているので、知識を深めることで、より広い視点で経済を考えることができます。
この記事が、身近なニュースや出来事に興味を持つきっかけになれば幸いです。
~最後までお読みいただき、ありがとうございました~